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コアホウドリ(Phoebastria immutabilis)の分類 アホウドリ科(Diomedeidae)
コアホウドリ(Phoebastria immutabilis)の概要 アホウドリ属(Phoebastria)

コアホウドリ(Phoebastria immutabilis)

近危急種 (NT or LR/nt)

【IUCN】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

【 学名 】
Phoebastria immutabilis (Rothschild, 1893)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:98.5~112 mm
・翼長:463~500 mm 
・跗蹠:82~93 mm
・尾長:130~151 mm
・卵:長径 101 mm×短径 68 mm

参考文献

最終更新日:2020-06-23 キノボリトカゲ

分布

太平洋中部および西北海域に広く分布し(Kuroda, 1988)、北太平洋のミッドウェー島やレイサン島で多数が繁殖する。

ハワイ諸島で標識された若鳥が、冬にしばしば日本の本州沿岸で回収されている。

1977年に繁殖が確認された小笠原諸島聟島列島に属する鳥島は国内での唯一の繁殖地(倉田,1978)で、かつては伊豆諸島の鳥島で多数が繁殖していた。

冬は本州の東方海上や伊豆・小笠原諸島近海でよく見られ、夏は三陸海岸沖や北海道の太平洋岸でよく見られる。

内陸に飛来することはないが、まれに迷行する(佐藤, 1985)。

日本海にはめったに現れない。希少種に指定されている。

参考文献

最終更新日:2020-06-23 キノボリトカゲ

生息状況

コアホウドリは、北太平洋で繁殖する3種のアホウドリ類のうち最も個体数が多く、ハワイ諸島のミッドウェー島やレイサン島などでは総計80万羽近くが確認されているが、これ以外の繁殖地は日本の小笠原諸島とメキシコ沿岸のクラリオン島しか知られていない。

かつては伊豆諸島の鳥島にも繁殖地が知られていたが、現在では消滅してしまった。

小笠原諸島の聟島列島では、1977年に繁殖が発見されて以来、毎年数十つがいが営巣しており、その数は増加傾向にある。

しかし依然として個体数減少の脅威はあり、そのひとつは混獲である。

延縄漁で釣り針についたエサを飲み込むと海鳥は溺死してしまう。

ハワイ海域で行われた調査では、年間1000羽以上のコアホウドリが混獲されていることが予想された。

このため、海域によっては「鳥ボール」と呼ばれる鳥よけの設置が義務付けられたり、釣り針が早く沈みエサを鳥に奪われないようにするなど対策がなされ、混獲は88~100%防止できたとされる。

また、アラスカ沖でのタラ・ギンダラ漁では2年間に4羽以上のアホウドリが混獲された場合、その漁場は閉鎖されてしまうなど、混獲に対する規制は厳しい。

日本の水産庁でもこうした指導を強化しているが、零細な漁民の中には対策をとるだけの余裕が無いものもいるなど問題は多い。

水中より水面で獲物を捕らえることの多いアホウドリの仲間にとって、近年増加しているプラスチックの廃棄物も脅威である。

海面に浮遊する廃棄物は親鳥にエサとともに飲み込まれ、そのままヒナに吐き戻して与えられてしまうため、それが原因とみられる死亡例が増えている。

海流の関係で浮遊廃棄物が集まるハワイ諸島では、ヒナの10%がその犠牲になっているという報告もある。

参考文献

最終更新日:2020-06-23 キノボリトカゲ

学名の解説

アホウドリ科は成鳥に伴って羽色が変化する種が多いが、この種はほとんど変化しないので、不変を意味する種小名がつけられている。

参考文献

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分類学的位置付け

ミズナギドリ目 アホウドリ科

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形態

成鳥の形質

羽色は翼上面と背および尾は黒褐色。ほかの部分はほぼ白く、黒い過眼線から頬にかけて灰色。

嘴は橙色で先端のみ黒く、足は淡桃色。

アホウドリ科は成鳥に伴って羽色が変化する種が多いが、この種はほとんど変化しないので、不変を意味する種小名がつけられている。

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幼鳥の形質

孵化直後の雛の全身には褐色の綿羽が密生し、嘴は黒褐色、虹彩は褐色である。

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最終更新日:2020-06-23 キノボリトカゲ

生態

生息環境

繁殖地は常に風に吹かれている外洋の無人島で、中腹以上に営巣する。

適度の植生が存在し、地面が安定している場所や平坦地が巣場所として好まれる。

地上性捕食者がいないことも条件である。ほかのアホウドリ類と同様、崖から飛び下りるか、陸上か水面を助走しないと飛び立てない。

水のうねりと海面上に生ずる風を利用して飛び立つ。

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食性

イカ類、トビウオ類、甲殻類を餌とする。とくにイカ類への依存度が高く、群れて採食することが多い。

多くの海洋生物が水面に浮上する夜間でも採食する。

外洋を帆翔し、餌を発見すると主に水面でくわえとるが、カツオドリ類のように空中から水中に突入して捕えることもある。

また、水面に浮かんで採食することもある。

雛には、未消化の海洋動物と消化した食物から出た脂肪を多量に含む油とからなる餌を口移しで与える。

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天敵

陸上でのネズミや、繁殖地の入江で巣立った雛を食べるイタチザメ。

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ライフサイクル

繁殖期は11月から翌年の6月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。

火山砂が堆積した傾斜地の地面に浅い窪みを掘り、ふちを盛り上げ、周囲から枯れ草や砂をくわえこんで皿形の巣をつくる。

12月から翌年の2月が産卵期で、1巣につき1卵だけ産卵し、雌雄交替で59~65日(Rice & Kenyon, 1962)、あるいは55~72日(Fisher, 1971)抱卵する。

繁殖を経験したことのある番の孵化率は68~77%、繁殖を経験したことのない番は46~66%と、繁殖経験の有無が孵化率に影響を与える(Fisher, 1971)。

孵化直後の雛の全身には褐色の幼綿羽が密生する。約5カ月間雌雄共同で雛に給餌する。

5~6月には繁殖を終え、繁殖地から去る。

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特徴的な行動

番の絆は強く、一度番になると生涯相手を替えないらしい。

儀式化されたさまざまな求愛ディスプレイは、互いが向き合ってまるでダンスを踊っているかのように見えるので、求愛ダンスと呼ばれる。

求愛ダンスは番の掲載のときだけでなく育雛期間中でも見られる(倉田・金子, 1978)。

巣立った雛が成長し、生まれた島に最初に帰ってくるのは早くて2歳、たいていはそれ以上の個体が多い(Fisher & Fisher, 1969)。

若い個体は、繁殖地に帰還しても、その年からいきなり繁殖することはなく、繁殖を始める年齢はたいてい8~9歳である(Fisher, 1969)。

若鳥や成鳥の生残率は年率93%以上で、ほかのアホウドリ同様かなり長寿である。

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最終更新日:2020-06-23 キノボリトカゲ

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