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クロアシアホウドリ(Phoebastria nigripes)の分類 アホウドリ科(Diomedeidae)
クロアシアホウドリ(Phoebastria nigripes)の概要 アホウドリ属(Phoebastria)

クロアシアホウドリ(Phoebastria nigripes)

近危急種 (NT or LR/nt)

【IUCN】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

【 学名 】
Phoebastria nigripes (Audubon, 1839)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:97~110 mm
・翼長:480~510 mm
・跗蹠:84~89 mm
・尾長:140~150 mm
・体重:5.6 kg

参考文献

最終更新日:2020-07-15 キノボリトカゲ

分布

ハワイ諸島から北アメリカ大陸間の東南海域に広く分布し(Kuroda, 1988)、北太平洋のハワイ諸島、ミッドウェー島、レイサン島、マーシャル諸島、ジョンストン島などで多数繁殖する。

ハワイ諸島で標識された個体が、冬に日本の東北地方や北海道沿岸で多数回収されている。

日本では、アホウドリの繁殖地である鳥島や小笠原諸島の聟島列島、尖閣諸島北小島で繁殖する。

鳥島ではアホウドリより本種の個体数のほうが急速に増加し、営巣範囲が拡大している(Hasagawa, 1978)。

冬は本州の東方海上や伊豆・小笠原近海でよく見られ、夏は三陸海岸沖や北海道の太平洋岸でよく見られる。

サバやサンマなどの泳ぎの速い魚群についているという。日本海にはめったに現れない。

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分類学的位置付け

アホウドリ科

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形態

成鳥の形質

【雌雄】
額は灰褐色を帯びた白色、頭上・後頭・頸は暗褐色を帯びた石盤灰色、眼の下には白色の斑がある。

嘴の基部には灰色に縁取った幅の狭い白色の輪がある。腮は淡白色、喉は暗灰褐色である。

肩羽・背・腰は黒褐色を帯びた石盤灰色、胸・腹・脇は灰鼠色で、下腹ほど淡色で、各羽の基部は白色である。

上尾筒は白色で、各羽には石盤褐色の縁があり、下尾筒は白色で、先端の部分の各羽端には褐色の斑がある。

翼は黒褐色で、初列風切の羽軸は麦藁色の淡黄色である。

下雨覆、腋羽は暗灰色である。尾は暗石盤色で、外側尾羽の基部は白色である。

嘴色は暗鉛灰色、虹彩は暗褐色、脚色は黒色。

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最終更新日:2020-07-15 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

喉と前頸は暗色、体の上面は暗石盤褐色、体の下面は褐色を帯びた灰鼠色である。

アホウドリの幼鳥とは嘴が短いことと、脚が黒色である点で異なる。

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卵の形質

卵は淡黄褐色を帯びた灰白色の地に暗褐色の微細な斑点が鈍端の方にだけ散在し、ときには淡褐色を帯びた灰白色の地色のものや暗褐色の斑点のやや粗大なもの、あるいは地色が殆ど白色で無斑に近いものなどがある。

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生態

生息環境

主として大洋で生活し、日本の沿海では伊豆七島の鳥島、小笠原諸島、硫黄列島、南鳥島などで繁殖し、鳥島では島の火口壁外側の海岸近くの波の寄せる岩上で繁殖する。

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食性

イカ類、トビウオ類、甲殻類を餌とする。とくにトビウオ類への依存度が高い。

外洋を帆翔し、餌を発見すると主に水面からくわえとるが、カツオドリ類のように空中から水中に突入して捕えたり、長い翼を広げて潜水して餌をとることもある。

また、水面に浮いて餌を漁ることもある。コロニー近海では比較的群れて採食する。

雛には、未消化の海洋動物と消化した食物から出た脂肪を多量に含む油とからなる餌を口移しで与える。

最近は、雛の餌の中にプラスチック類が含まれ、雛の成長や巣立ちに与える影響が危惧されている(長谷川, 1981; Ogi et al., 1994)。

雛に与える餌にこうした異物が混入されていることは、本種のみならずアホウドリやコアホウドリでも報告されている。

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特徴的な行動

繁殖期は10月から翌年の5月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。火山砂が堆積した傾斜地の地面に浅いくぼみを掘り、周囲から枯れ草や砂をくわえこんで皿形の巣をつくる。

11~12月が産卵期で(清棲, 1978)、1巣につき1卵だけ産卵し、雌雄交替で63~67日抱卵する(Rice & Kenyon, 1962)。

孵化直後の雛の全身には褐色の幼綿羽が密生する。約5カ月間雌雄共同で雛に給餌する。

日中、雛は巣から 30 mぐらい離れた日陰を求めることが多いが、親鳥が餌をもって帰ると急いで巣にもどる。

5~6月には繁殖を終え、繁殖地から去る。

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最終更新日:2020-07-15 キノボリトカゲ

その他生態

10~11月ごろに繁殖地に渡来し、高密度のコロニーをつくって集団で繁殖する。

コロニーの中では、巣を中心に狭い範囲のなわばりをもって分散する。

番の絆は強く、一度番になると生涯相手を替えないらしい。

巣立った雛が成長して、生まれた鳥に最後に帰ってくるのは早くて2歳、たいていはそれ以上の年齢の個体が多い(Rice & Kenyon, 1962)。

若い個体は、繁殖地に帰還してもその年からいきなり繁殖することはなく、繁殖を始める年齢はたいてい7~8歳である(Rice & Kenyon, 1962)。

番の形成の際に、儀式化されたさまざまな求愛ディスプレイは、互いが向き合ってまるでダンスを踊っているかのように見える。

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種・分類一覧