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- セグロアジサシ(Onychoprion fuscatus)について

セグロアジサシ(Onychoprion fuscatus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Onychoprion fuscatus (Linnaeus, 1766)
基本情報
- 分布
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世界各国の熱帯・亜熱帯の島や沿岸で繁殖する。日本では琉球諸島の沖縄本島。
仲ノ神島、尖閣諸島の北小島・赤尾島、小笠原諸島の西之島、南鳥島などに夏鳥として渡来し、繁殖する。
繁殖地以外では、北海道、本州、四国などの南方地域から台風によって運ばれてくる個体であると考えられている。
参考文献
最終更新日:2020-07-14 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雌雄夏羽】
額は白色で、眼の上まで白色の太く短い線が延びている。
眼先から耳羽の上半部まで黒色の過眼線が走り、頭上・後頭の純黒色部に引き続く。
腮・頬・耳羽の下半部は純白色である。後頸は幅狭く純黒色で、その両側および前頸・頸側は純白色である。
背・肩羽・腰・上尾筒は褐色を帯びた黒色、胸・腹・脇・下尾筒は白色で、下腹と下尾筒は多少灰色を帯びている。
下雨覆・腋羽は多少灰色を帯びた白色である。
初列風切は黒色で、内弁の基部には淡褐色の縁があり、羽軸は褐色で、下面はクリーム白色である。
次列風切は黒色で、内弁の大部分は白色である。
三列風切は黒色、大・中・小雨覆、初列雨覆、小翼羽は褐色を帯びた黒色である。
尾は黒色で、羽軸は褐色を呈し、最外側の尾羽の外弁および内弁の基部は白色で、羽軸は白色であるが、ときには全部白色のものもある。
嘴色は黒色、虹彩は暗褐色、脚色は黒色。
【雌雄冬羽】
頭上の各羽には白色の縁があり、眼先には白色の斑がある。
参考文献
最終更新日:2020-07-14 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【雛】
孵化直後の雛は全身に幼綿羽が生え、各幼綿羽の先端は毛の様で、数十本宛先端が寄り集まり、全体として疎生する様な外観を呈する。
体の上面および上喉は灰白色と灰黒色およびクリーム色の斑点の散在からなり、体の下面は白色である。
【幼鳥】
1年目:頭上・後頭は黒褐色、体の上面は黒褐色で、各羽縁にはクリーム色の幅の広い縁があり、雨覆羽も同様であるがやや黒色勝ちである。
体の下面は褐色、腹・下尾筒は灰白色で、下尾筒の各羽縁には淡赤錆色の縁がある。嘴色は褐色、脚色は褐色。
2年目:体の上面は暗石盤色で、各羽には淡色の細い縁があり、体の下面は石盤灰色を帯びた白色で、腹・下尾筒は淡灰色である。
参考文献
最終更新日:2020-07-14 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は純白色、クリーム色、淡紅色、オリーブ色、褐色、赤味のあるクリーム色などの地に、暗褐色、黒褐色などの粗大な斑紋や斑点と灰鼠色の斑点とが散在する。
参考文献
最終更新日:2020-07-14 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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海岸・洋上で生活するアジサシ類で、沿岸や島嶼の海岸や岩礁で集団繁殖する。
繁殖地として、砂浜や背の低い草が生育する開けた平坦地を好み、岩石が積み重なっているような場所や岩棚を選ぶ傾向はない。
島の周辺の比較的波の静かなところに多い。アジサシ類のなかでもとくに外洋で採食する性質が著しく、長距離を飛び続けることができる。
繁殖期には地上に下りるが、歩くことは苦手で、もっぱら砂の上や岩の上で休息する。
羽毛に防水機能がなく、長時間水面に浮くことはできない。
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最終更新日:2020-07-14 キノボリトカゲ
- 食性
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海岸や海洋の上空をヒラヒラとはばたいて飛び回り、獲物を見つけると上空から直角に急降下して海の表層にいる魚やイカを捕える。
また、尾羽を広げて翼をバタバタと激しくはばたかせる低空飛翔を行いながら餌に狙いをつけることもある。
主に魚類やイカなどの軟体動物を食べ、雛にも同様の餌を与える(安部ほか, 1986)。
餌を丸呑みして集団繁殖地にもち帰り、吐き戻して雛に与える。
早朝、明るくなる前に繁殖地を離れ、外洋に出て採食し、夕方暗くなってからもどってくるため、繁殖期のとくに日中にはコロニー周辺の海上では見られない(安部ほか, 1986)。
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最終更新日:2020-07-14 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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南西諸島では4~8月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。小笠原諸島の西之島では1月と6~7月に2回産卵する(倉田・金子, 1982)。
砂浜に窪みをつくって巣としたり、岩礁の上に直接産卵するが、いずれの場合も巣材を使用しない。
1巣卵数は1個、27~30日雌雄交替で抱卵する(Feare, 1976)。雛は早成性で、孵化後数日で巣を離れる。
雌雄共同で雛に給餌する。雛は常に片親に付き添われて成長するが、巣立ち(初飛翔は孵化後約60日目)が近づくと営巣地には雛だけが残され、雛集団はクレイシとよばれる託児所をつくる(河野, 1991b)。
夕暮れに餌を持ち帰った親鳥たちが啼きながら集団の上空を旋回すると、雛はすぐ自分の親鳥の鳴き声に応えて自分の存在を知らせる。
数十 kmもの沖合で餌をとり、持ち帰った餌は夜間に数回に分けて雛に給餌する。
親鳥は巣立ち後、繁殖地を離れてもいっしょに飛び続け、雛の採食技術が完成するまで空中給餌をして世話をする。
8月下旬になると、幼鳥集団は鳴き合いながらいっせいに飛び立つ行動を繰り返し、繁殖地の上空を高く舞うようになる。
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- その他生態
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3月に繁殖地の上空に集結し、その後4月下旬に営巣地に初めて着陸するまでの40~50日、地上に下りることも水面に浮いて休むこともなく、ただひたすら飛び続ける。
大集団になるといっせいに繁殖地に下り、コロニーをつくって繁殖する。
番は、巣を中心に半径 30 cmぐらいの狭いなわばりを構えて分散する。
なわばりの中に隣の雛が迷い込んだりすると、なわばり所有者は激しくつついて攻撃する。
コロニー内では、各番の繁殖の進行は比較的同調している。
参考文献
最終更新日:2020-07-14 キノボリトカゲ